ユーミン50周年に寄せて

1972年7月5日 「返事はいらない」をリリースしたユーミン。

私が彼女を知ったのは、映画「魔女の宅急便」

あのひとの ママに会うために
今ひとり 列車に乗ったの
たそがれせまる 街並みや車の流れ
横目で追い越して

なんだこのオシャレな世界は!
よく「雷に打たれたような」と表現することがあるが、正直それではない。
どちらかと言えば、ジワジワ効いてくる感じ。

思えば、このジワジワが沼の入り口だったのだろう。ジワジワからズブズブと深みにハマって35年近い。

その間、いけばなと出会い、何かの拍子に「ユーミンの世界観といけばなは似ている」と身勝手な結論を導き出し、ユーミンの楽曲から着想を得て作品にすることが幾たびもあった。

見ることのできた景色

【Cowgril Bluse】(2008年)

それは時に小さなウエディングドレスを仕立てたり、夜なべ仕事にダメージジーンズを作ったりと、我ながら何をやっているのか分からないこともしばしば。

【7 TRUTHS 7 LIES〜ヴァージンロードの彼方で】(2001年)
Yuming Tribute Piano Concert(2010年)

同じユーミンファンのピアニストの方とコラボステージやら、ナゴヤドームでのデモンストレーションステージで【最後の春休み】をテーマに作品制作後、唐突に歌い出したり、奈留島まで行って【瞳を閉じて】の歌碑前で花いけライブをしたりと、ユーミンファンの華道家だからこそ見ることのできた景色は多い。

花いけライブ in 奈留島【瞳を閉じて】(2022年)

雪月花

実を言うと、このサイトの冒頭に記載している「唐の詩人、白居易の…」の文章は、ピアニストとのコラボステージで配布したプログラムのご挨拶で書いた文章を抜粋し、サイト掲載用に若干の加筆をしたものである。

この文章、前半はご来場の皆さま、ご協力いただいた皆さまへの謝辞があり、後半にユーミンといけばなを絡めた文章が続く。以下、その部分。

唐の詩人、白居易の「寄殷協律」の一句「雪月花時最憶君(雪月花の時 最も君を憶ふ)」がわが国に伝わり「雪月花」という言葉は日本の美を象徴する語句となりました。雪はいつか融けて消え、月は毎夜その姿を変え、花はいつか散る。世の無常にも通じた世界観。はからずもユーミンの楽曲にも同じ「雪月花」という曲があります。

私が作品を制作するとき、そこにはいつもユーミンの曲がありました。ユーミンの曲には日本的な情緒があります。儚いものに美を見出し、それを愛でる。これはいけばなにも通じるものだと、私は考えます。同じ花材、花器を使っても二度と同じ作品はできません。完成したと思った作品でも、花は日々刻々とその姿を変え、そして枯れていきます。いけばな作品は静の美のようで、実は動の美なのです。(後略)

ずいぶん強引に結び付けているようだが、この考えは今でも変わっていない。先述のように誠に身勝手ではあるが、ユーミンの世界観はいけばなとの親和性が高いと思う。

花作品として「雪月花」を制作したのは2003年。

まだ花教室も弟子もいない時分で、同じくユーミンファンの友人に手伝ってもらった。

今でこそこの程度のこと一人でやれるが、当時は大騒ぎした記憶がある。

ついでに思い出したのだが、このあと食事に行き泥酔、財布を無くす失態を犯している。手伝ってくれた彼とは今でも仲良くしているが、ことあるごとに当時の話を蒸し返してくれる。

それにしても若い

カラー、バラ、ユリ、オンシジウム

過去のユーミンの楽曲をテーマにした花作品を見返していると、大ヒットした楽曲よりもアルバム収録の、比較的渋めの曲を多く取り上げていることに気がつく。

【DAWN PURPLE】(2004年)

そして比較的同じ花材を使いがちだとも発見した。
特に多い花材としては、カラー、バラ、ユリ、オンシジウム。

これはユーミン自身のイメージがそうさせるのだろう。

【Judas Kiss】(2011年)
【Woman】(2005年)
【恋は死んでしまった】(2004年)

稀代のアーティスト

もちろんユーミンの楽曲をテーマにした作品ばかり制作してきたわけではないが、花が楽しくなってきた2000年代に発表した作品が特に多い。実はこのころに描き溜めた作品アイデアブックがあって、まだ実現できていない作品が山のようにある。

そして過去に発表した作品でも、同じテーマで練り直して発表したものもあれば、再度取り上げたいテーマもある。

その昔、ユーミンは言った。

才能は、母乳と一緒で、出さないと体に悪い

もし、私に少しでも才能があるのなら、まだまだ作品を生み出さないと体に悪いだろう。
生み出すためにはエネルギーが要る。間違いなくその源はユーミンだ。

稀代のアーティストと同時代を生きることができる幸運を噛み締め、心から彼女に感謝したい。

ユーミン おめでとう!!

そして本当にありがとう!!!