お稽古日誌

私自身の仕事や、教室企画でのイベントなど、稽古場では様々な話題が飛び交うようになってきた。久しぶりに活気のある稽古場が戻ってきている。

花器に対してツバキの存在感が強い。窮屈な印象すら受けてしまう。これだけしっかりとしたツバキなら、水面をしっかり見せることができる角水盤の方がバランスがいい。
いけばなもフラワーアレンジメントも、植物を使った立体造形であるが、特にいけばなは余白の美を意識する。これは花の部分だけでなく、器にも同じことが言える。

しっかりと余白を作ることにより、より植物本来の美しさを際立たせることができる。

いけばなの特徴として、基本は三角形で構成し、余白を作り出すところがある。
この作品、確かに三角形ではあるが、作品全体の余白がない。これをアシンメトリーで作ると、余白ができあがる。
そして植物の向きにも気をつけたい。全体的に裏向きになっている感じがする。これはいけ口が丸見えになっているせいであり、ドラセナをバラして入れることにより、作品全体の重心を下げ、植物の表側を見せることができる。

レンギョウの伸びやかな枝。縦に伸びるラインが複数本入れられている。この数本の向きを反転させるだけで、作品全体が大きくなるのと、伸びやかな印象に代わる。レンギョウは四方に向かって花が咲く。なので左右反転させていけてもさほど問題ない。

この作品については、造形と色彩について考えたい。
まず造形として、一番見せた花材は何か。この場合はレザーファンとのことだったので、面をしっかり見せることにする。全体に右に傾斜してるものばかりなので、メインのレザーファンを左に傾斜させ、バラを低くすることで全体的に面をしっかりと強調させる。
もう一つ、色彩について。花器のブルー、レザーファンのグリーン、バラの赤と、とにかく彩度の高い色の組み合わせになる。こういった場合、何をメインに見せたいかを見据えることにより造形が変わってくるし、この場合は花器の人工的な青との調和が図れる。

枝物が入らない花材組みで、色合わせも少々難しいかもしれない。まずはどんなイメージでいけるかを明確に思い浮かべないと、まとまらなくなってしまう。

「手付き水盤を花かごに見立てて、花を摘んできたイメージ」という今作。ならば、スターチスを短くして水盤の手をしっかり見せ、2色をバランスよく取り混ぜることにより、量の中にも軽やかさが出る。

クラスペディアで全体にリズムを出せば、線と量の対比が出て全体がまとまった感じになる。

アリウムの曲線を際立たせるために、スターチスを低く使う。確かにその手法はアリだが、結果的に寂しい印象になってしまった。

また、アリウムとスターチスを、それぞれ干渉しない位置で入れると、散漫な印象になり統一感が出ない。またスターチスとニューサイランを同じ大きさでまとめると粗密のコントラストが強くなる。

スターチスを足して全体をふんわりさせる。こうすることでニューサイランが際立つ。アウトラインのアリウムの中に、ニューサイランのゆったりとしたラインを入れることで、リズムの中にも破調が表現できる。これがあるのとないのとでは、作品の雰囲気はがらりと違ったものになる。

これを”効いてる”とか”効かせる”とか、そんな言い方をする。葉一枚で雰囲気が変わっていくのだから、いけばなは面白い。