繋がる時間


新幹線話ばかりで、やっと本題に入れる…のか?

 

タイムトンネル


「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
川端康成「雪国」の有名な冒頭文である。

小説に出てくる「長いトンネル」とは、上越線 清水トンネルのことだが、新幹線だと大清水トンネルを通る。
いずれにしても長いトンネルであることには違いはない。
越後湯沢駅のひとつ前、群馬県の上毛高原駅までは、ほとんどと言っていいほど雪がない。

越後湯沢に着く直前、件の長いトンネルを抜けた瞬間に広がる雪景色に、新幹線車内は少し色めき立つ。


新幹線のドアが開き、ホームに降りて雪国独特のピリリとした空気に包まれると、自分の中で去年と今年が一気に繋がる。

言葉ではなかなか言い表せないのだが、敢えて例えるのならば、ぷつりと切れた映画フィルムの続きを繋げたような感じだろうか。
だとするなら、あの長いトンネルは、過去と現在を繋ぐタイムトンネルだ。

そのトンネルをくぐって、いよいよバカンスの始まりである。
(これまでの道中はバカンスではないのかと問われると窮してしまうが、居酒屋とでも言っておこう)

 

お抱え運転手


越後湯沢には、新潟に先乗りしている友人が迎えに来てくれる。

この友人、私よりも一回り年上なのだが、彼のクルマに乗り込むや否や「出迎え、ご苦労」と言うのが恒例となっている。
こんな偉そうに言えるのも、20年来の友人だからであろう。

しかし、もし私が彼の立場で、一回り年下の人間から「出迎え、ご苦労」などと不遜な物言いをされたなら、私は即座に車外へ叩き出すに違いない。


別に友人の弱みを握っているわけでもないのだが、この人はいつも親切だ。
酒好きなのに、運転があるからと我慢もする。酒処新潟なのに、である。

さて、そんな友人の運転でクルマを走らせること約40分。
いよいよ苗場プリンスが近づいてくる。


今年は驚くほど雪が少ない。
なんならノーマルタイヤでも走れるのではないかと思うほどだ。

こんなことなら自分のクルマもスタッドレスに履き替えているし、自ら運転して来ることもできたのではないか…と一瞬脳裏をよぎったが、そんなことをしたら真っ昼間のビールが愉しめない。


陽のあるうちからビールを飲むからこそのバカンスである。
やはり助手席が一番いい。
…などと自分でも「毎年のことを素直に書いているが、結構ひどい言動だな」と、いま書きながら少し反省をしている。
来年はもう少し改まるだろうか。いや、たぶんそれはない。
もう20年、この調子のままなのだから。

 

ただいま。苗場。

 
みつまたスキー場を横目に見て、貝掛温泉を抜け、かぐらスキー場を過ぎれば、いよいよ苗場プリンスが近い。

火打1号雪覆道を抜けると一気に視界が開け、右手に巨大な建造物群が目に飛び込んでくる。
この瞬間、途切れたフィルムは再び回り始める。

あ、やっぱり今回も本題に入れなかった。
続きは次回。