お稽古日誌

年が改まると、一気に春の花が出てくる。花屋の店先にも一足早い春が訪れているようだ。

蕾状態のウメなので、ザ・枝!な感じでちょっと寂しい。主材をウメにするかツバキにするかによって変わるが、今回はウメもツバキも両方足して作品全体にボリュームを出した。
そしてもう一つ大切なのは、花器の方向。この花器は卵型。どこを正面にするかによって、作品全体の印象がガラリと変わる。

ユキヤナギは自然のカーブを活かしきれるかが作品構成の上で重要である。そのためには枝のカーブ、花のつき方をよく見極めたうえで、細かいテクニックを駆使しつつ思い通りの形に仕上げる。

上に伸びるユキヤナギが右から左へ大きくカーブしているから、この枝が補佐する枝とぶつかってしまった。主枝以外の花材を左右反転させ、枝を整理した。こうすることで、作品の中に余白が生まれ、また全体にも大きな流れができあがる。

全体的に「あれ?なんとなく淋しい?」なイメージになってしまったのは、トクサが四方に散った上部に対して下部の花にボリュームがないため。
花材にボリュームがないのなら、トクサの造形で視覚的なボリュームを出せばよい。

そしてこの場合も花器の向きにも注意が必要だ。横に広がる面を正面とすると、どうしても花材のボリューム感に欠けてしまう。
少し斜めにして花器の幅を細く見せることにより、花器自体の奥行き感と作品全体に変化がつけられる。

花全体が窮屈な印象になった原因は、上に伸びる枝が同じ方向に向いてしまっているから。
そこに他の花々を入れようとするから、花と花の間隔が近くなる。
サクラの向きを反転させ角度をつけると空間ができる。

もう一点、配色に注目したい。サクラ・チューリップの優しい色合いに対して、ヒペリカムは強い赤である。これが緑の葉の中に入ると補色効果で更に引き立ってしまい、上部に行けば行くほど作品の重心が上に行ってしまう。この場合は短くして中心部に寄せることにより重心を下げることでき、またアクセントカラーとなる。

「うーん、とてもアバンギャルド」 私の第一印象である。
この形をそのまま大きくして花材を増やせば壇上に飾る作品になる。しかしいけばな作品となると、やはり全体の流れとか枝ぶりの面白さを追求したいところ。

トサミズキの枝を整理し、美しいカーブを描けるラインを探す。そしてほぼすべて垂直に入っている花にも傾斜をつけて、作品に表情をつける。
いけばなは余白の美も大切な要素で、その余白にも緩急をつけるとより面白い作品になる。

上と同じ花材組みで、こちらは主枝が横に伸びる形。
枝と花が完全分離して、そのぶん花が窮屈な印象。それぞれの寸法は申し分ないから、それぞれの角度をつけたり、間隔をしっかり空けることにより非常に豪華な印象になる。

さて、この横に伸びる形の場合、剣山はほとんど使わない。様々なテクニックを駆使して花を留めていく。これは文章で伝えきれるものではないので、ここは是非入門した上で、このテクニックを身に着けていただきたいところである(唐突な宣伝)