10月のお稽古

お稽古花をお願いしていた生花店が9月で閉店されてしまい、新たなお店でお願いすることになったが、ほぼ今まで通りの花材が調達できそうで安心している。

 

 

基本の瓶花(投入れ)でいけたMさん。大変堂々とした力強い作品に仕上がった。
 枝ぶりもよく見ているし、前に迫り出してくるツツジもボリュームがある。しかしそのボリュームが仇となってしまい、他の花が窮屈な印象に。

 

ツツジの枝を整理し、花のひとつひとつがしっかりと見えるだけの空間をあけた。ツツジは細かい枝の、どこを取るとすっきりと見せることができるかを考えると良い。

 

 

自然の風景を写し取る風致いけにしたTくん。及第点。
 写真に撮るとどうしても奥行き感が分かりにくくなるが、左側の枝が後ろにも伸びていて、奥行きが感じられる。

 

 

細かい部分だが、自然の風景を写し取る形なので、ドラセナを丸めて根締めとするのは、少し技巧に走りすぎている感があり、花材の組み合わせとしてツツジやリンドウなど、山の植物を中心にまとめるとなると、観葉植物であるドラセナは風致いけには少し不釣り合いになる。思い切ってドラセナを取るか、使っても多少のぞかせる程度に抑えておくと良い。
また特に流れを重要視すれば、下に流した枝を整理することにより、より大きい余白を作り出せ、作品全体の流れがはっきりする。

 

 

 

徐々に水盤のコツが掴めてきているAさん。根元をドラセナにしていたが、これでは全体がだらしない印象になってしまう。他の花材の寸法はほとんど直しなしだっただけに、そこが残念である。

 

ドラセナをツツジに変えて輪郭をくっきりさせると、作品自体の流れと重厚感が出る。
 またツツジは葉がぽろぽろと落ちてしまうから、これはこまめに取り除かなければならない。

 

 

ここ最近の稽古花は、非常にオーソドックスな花材組みにしていたが、この日のお稽古は比較的キャリアの長い方ばかりだったので、少し趣向を変えたものにした。
 フウセントウワタのプクプクした感じをダイナミックなスタイルでいけたSさん。全体の流れや量感も良い。

 

緑と赤という補色になる色合わせで、全体的に右側が少し寂しい感じがする。右下にグロリオサを持ってくることにより、全体に鮮烈さが出た。
 いけばなでは作品全体のフォルムに目が行きがちだが、色の効果も考慮すると一気に印象が変わる。

 

 

水盤を用いて、目指せオーソドックスからの脱却!を念頭に奮闘したYさん。フウセントウワタの実を雨粒に見立てたが、他の花を隠しがちに。
 スプレーカーネーションが、ほぼ同色のアンスリウムの影になっているが、これは本人の作意。

 

フウセントウワタを思い切って短くし、水盤半分に花が集まるようにした。
 他の花もそれぞれが被りすぎないようにキュッとまとめ、色の対比を見せた。

 

旧暦の9月9日にあたる10月25日を目前に控えた稽古日は、重陽の節句に因んだ菊の一種いけ。私の花教室では、私自身が美しいと思う一種いけを提案している。
 9本の菊に挑んだSさんは、それぞれの寸法を吟味して高低差をきちんとつけた作品に仕上がった。

 

全体には逆三角形のフォルムを形成しているが、上部は若干の間延びを感じさせてしまう。また、画像では分からないが、いけている足元が揃っておらず、そこが残念な点。
 思い切ってたてのラインを強調させ、すっくとした清々しい印象を出す方が、いかにも一種いけの醍醐味といえるだろう。