リモート稽古を経て、稽古場での稽古が再開。もちろん3つの密を避けて。
やっぱり生がいい
当たり前のことだが、いけばなは立体造形物だから、3次元のものを2次元で遠隔指導するのは限界がある。けれど、普段お弟子さんがどんな場所に花を飾っているのか、そしてそこに飾るにはどうしたらよいかの具体的な話ができたことは大きな成果だと思う。これこそが、いつも私が言っている「花のある暮らし」なのだ。
稽古場を再開させて、いの一番に感じたのは、微妙な遠近感や、カッコよく言えば、花がそこにあることの空気感も含めた指導ができるのは、やっぱり生で、目の前で、その場でしかできないことなんだということだった。
刺身だってビールだって生が美味しいのと同じである。……何の話だ。
「2ヶ月ぶりのお稽古だから、感覚が戻らない」とボヤいていたYさんだが、鈍るどころか上達している。ソケイの枝ぶりをよく見ているし、ケイトウとリアトリスの配置が良い。
夏のナナカマドは、そのまま使うと葉が繁りすぎているし、ちょっと油断して葉を落としすぎてしまうとスカスカになってしまう。伸びやかなラインを横型でいけたとTくん。どの葉を落とすかがポイントになる。
こちらは葉を残し、ナナカマドのボリューム感を出したSさん。シャクヤクのボリュームに負けていない。最上部の葉を整理するかどうかで悩んでいたが、野趣を残す観点から、そのままにした。
同じくSさんの作品。稽古花とは思えない量のナナカマドが入っていたので、2作品に分けた。これはこれでスッキリとしてモダンな花器と相まって面白い感じに仕上がっている。
この週のお稽古には、特別ゲストとして、親しくさせて頂いているフラワーデザイナーの曽我部翔さんをお迎えした。曽我部さんを尊敬しているTくんの2作品。
まずは水盤にベーシックないけばな。ニューサイランの直線を活かし、たてのラインを強調した。
もうひとつは、曽我部さんが花器を選び、10分でいけ上げるという課題を出した。
画像は曽我部さんが手直しをした後のものだが、先ほどとは真逆の、ニューサイランを輪にして、作品全体にリズムをつけ、1本を長く使うことにより、アクセントをつけている。
「基本に忠実に」と口を酸っぱくして言っている私だが、あまりそこにとらわれすぎてしまうと、花材の組み合わせによってはとても野暮ったくなってしまうこともある。そんな時はどこかの役枝を省略するとか、空間を作ってみると案外すっきりと洗練された作品になる。
「いけばなは余白の美」といわれる所以はそこにある。