全作品を、エピソードを交えながら掲載すると、これだけの量になるのかと、自分でも驚いている。
というか、ただ単に私の文章が長いだけとのご指摘は甘んじて受けたい。
ひらりっ
今回の展覧会のための新作。この作品と出会った瞬間、私の脳裏には、ある風景が思い浮かんだ。
見知らぬ町を ひとり歩いたら
風は空から 花びら散らす
過ぎゆく春の 投げる口づけは
髪に両手に はらはら停まる
荒井由実「花紀行」
春の金沢をモデルにした歌詞は日本的で美しく、この白磁作品には桜しか考えられなかった。
花材:ヨシノザクラ
なずなぞ
賛否両論となった作品。ミツマタで花器を取り囲み、全体に白の塊として、中に強い色の花を持ってきた。この作品のミツマタは、この春から東京の花の専門学校に進学する弟子が、出発前最後に手掛けたもの。
花材:脱色ミツマタ・シャクヤク
蛤
蛤の意匠の蓋物に、伸びやかなラインのフリージアを一種いけにした。本来、花器としての用途ではないこの蓋物、私は毎年節分が過ぎると、ひなあられを入れ高坏に乗せ飾っている。
実をいうと、この作品はもっと洋風に仕上げるつもりだったのだが、高坏と合わせると決めた瞬間に、和の方向へ舵を切った。結果、この方が凛とした雰囲気が出て良かったのではないかと思う。
花材:フリージア
樹氷
普段使いの花器としては、本当に使いやすいと思われる。だからといってこの展示会でオーソドックスな花を提案していいものかどうか、非常に根本的な部分で悩んだ作品。
結局、バラの花びらを一枚一枚くっつけるという、心底めんどくさい作業を延々やる羽目になった…のは弟子なので、きっと恨まれてるだろうなと容易に想像がつく。
花材:サンゴミズキ・バラ(プリザーブド)
鴻
最後の作品「鴻」は、私が最も好きな花器。大変いけやすい。そしてこの花器には昨年もいけているのだが、その時は洋の花材を使い、花自体もちょっと遠慮していた。今回は遠慮せず、和のイメージでたっぷりいけた。花材が変わるだけで、ここまで印象が違うのが面白い。
花材:ツバキ・ピンポンマム