せっかく何時間もかけて到着した苗場でも、ここ何年も滑っていない。
大人遊びにシフト
考えてみたら、滑らなくなって何年ではなく、もう10年以上になるだろうか。
滑らない理由はただひとつ、怪我が怖いからだ。
苗場の前後には、何かしらの仕事が入っている。
骨折でもして動けなくなってしまったら、作品づくりどころか、市場に仕入れだって行けなくなってしまう。
こんなつまらないことはない。
いや、つまるとかつまらないなどという次元ではない。
死活問題だ。
バリバリ滑っていた頃は、夕方までゲレンデで雪まみれになり、ライブの後は興奮冷めやらぬままホテルの部屋で飲み会が始まり、それは空が白々としてくる頃にようやくお開き、そこから再びスキーウエアに着替えて、朝イチで筍山の頂まで行っていた。
朝まで飲んでいたのと、気圧の関係で、顔なんてパンパンに膨れ上がっていたのだが、よくまぁあんなことができたものだ。
それが今では、真っ昼間から飲んだくれているだけである。
飲酒量は大して変わらないかもしれない。むしろ当時の方が大量に飲んでいたのではないか。
ただ、ゲレンデに出ていた分だけ、ある意味健康的だったとも言える。
もちろんその当時だって社会人として仕事をしていたから、怪我でもしようものなら周囲にとてつもない迷惑がかかったであろうが、絶対大丈夫と、根拠のない妙な自信があったと思われる。
年齢を重ねてその辺りに注意を払えるようになったのか、それともただ単に体力的な衰えが著しいだけなのかは不明だが、理由はどうであれ、ここ最近は大人な時間を過ごすようになっている。
夜のゲレンデを眺める一杯
苗場プリンスには、ゲレンデに面した「シャトレーヌ」というカクテルラウンジがある。
ライブ期間中はユーミンナンバーのピアノ生演奏があり、ライブ後の深夜まで営業をしている。
昼間ゲレンデに出なくなってからは、ライブ後はここでしっぽりとカクテルを愉しむようになっている。
今年も静かにカクテルを傾けることにした。
ところが、である。
ライブの興奮はカクテルによって増幅され、妙なスイッチが入ってしまった我々は部屋に戻ってもウズウズしてしまい、コートを羽織ってライブ会場前に再度集合してしまった。
いよいよ始まるバカの解放
これは真面目な華道家のブログである。
こんなことを書いていいものか多少なりとも逡巡するところはある。
しかしリアルタイムでTwitterに投稿していたのだから、今更逃げも隠れもできまい。
仲間うちに、毎年美味しい苺を持ってきてくれる人がいる。
今年も大粒の苺を持参してくれたのだが、どうしてこんなところで食べることになったのか、この時も、そして今も分からない。
苺を頬張りながら誰かが言った。
「いつも苗場はガチンコだよね」
その通りである。
体力の限界に挑むように、全力で遊び尽くす数日間だ。
「バカンス」「リゾート」という響きから連想されるような、時間的なゆとりとか、のんびりすることがない。少なくとも我々には。
だからと言って、ガチンコ相撲を取る必要がどこにあるというのか。
妙なテンションを保ったまま、我々はゲレンデに出た。
クールダウンではない。ただ面白がっているだけだ。
その時「NAEBA」のオブジェで撮ったのが、冒頭の写真である。
深夜2時近く。声を上げてはしゃぐなんて、みっともないことはしない。
そこは大人だ。