私が本格的に花を仕事として受けるようになったのは、30歳を過ぎてから。
そのエポックとなったのは、2010年6月に開催した「Yuming Tribute Piano Concert 特別編」である。
詳しくは別の機会に書くことにするが、これはピアニストの笛木健治さんと企画したもので、ユーミンのナンバーを笛木さんが弾く隣で、私が花をいけるライブイベント。
そこにドラァグクイーンのアルピーナさんがゲストとしてご出演くださった。
ドラァグクイーンとは、マツコ・デラックスさんとか、ミッツ・マングローブさんなんかを思い浮かべていただければ分かりやすいかと思う。女装したパフォーマ―のことである。
アルピーナさんは、ユーミンご本人からも「私のAIが入ってる」と言われるほどビジュアルはもちろん、話し方、仕草までそっくりな方。
このアルピーナさんと初めてお会いしたのが、2010年2月の苗場。
その場でご出演していただけることが決まり、6月のイベントは成功裡に終わった。
13年の時を経て
2010年のイベント終了後は、お二方となかなかお目にかかれる機会に恵まれず、なんだかんだと2023年。
今年も苗場に来られたことをしみじみ嬉しく感じながらエレベーターに乗り込むと、20年来の友人、Yくんと偶然乗り合わせた。
久しぶり!何年ぶり?と話していたら、Yくんは「笛木さんも来ているよ」と教えてくれた。お会いできたらいいなと思いながら、一旦部屋に戻り、改めてライブ会場に向かうと、ロビーに笛木さんのお姿を見つけた。
懐かしい懐かしいと再会を喜んでいると、後ろから肩を叩かれた。振り返れば、なんとそこにはアルピーナさんが!
期せずしてあのイベントの3人が揃った。しかも縁の深い苗場で。なんならユーミンデビューの50周年のメモリアルな年に。
今年の苗場は全8公演。そして年々チケットは取りづらくなっている。そんな中で3人が偶然に揃う奇蹟の一夜となった。
思わぬ再会に胸がいっぱいになったまま、ユーミンのライブが始まった。
ライブ半ばには「ユーミンカルトクイズ」が行われ、例の友人Yくんが正解するミラクルを起こす。ついでに彼はディープすぎる話までして、会場の空気を引かせていた。
相変わらず気持ち悪い人である(全力で褒めてる)
あれから
2010年のイベントが終わってから、私は花の仕事をいくつかいただくようになって、さらに花教室を開き今に至る。
振り返ると、あのイベントは花を仕事としていく覚悟ができたものであったし、どんなことができるのだろうとワクワクした毎日を過ごしていた。
イベントで知り合った方からさらに新たな道が開け、そしてそれは私の弟子の進路にまで影響している。
もちろんずっと順風満帆だったわけではない。教室も花の仕事も辞めてしまおうかと悩んだこともあるし、自信を無くして落ち込んだことなんて数限りない。
苗場ライブ終演後、改めて3人で写真に納まった。
あのときの気持ちがよみがえった。もう一度夢を見よう。そんな気持ちになった。
奇蹟の一夜は、偶然再会できたことだけではない、何かを手に入れたような気がした。
「手に入れたのは脂肪」などという陳腐なオチはつけない。
それにしても残酷なほど太ったな。私。