「お仕事」を終え、「推し事」2日目。快晴。
今回の宿は国立競技場の真正面。
思わず「1920」なんだよな…とユーミンミュージアムを引きずっている自分に気がつく。
これまた偶然なのだが、この日は全国大学ラグビーフットボール選手権大会の決勝が行われる。そう。「NO SIDE」の世界なのだ。
※正確にはこの曲のモデルは花園ラグビー場だし、旧国立競技場でユーミンが歌った時は早明戦だが、いちいち強引に結びつけるところがファンの悪い癖である。
ふと視線を右に向けると、国立競技場の向こうに富士山が見えた。
なんだかとても縁起がいい気持ちになるのは、やっぱり私も生粋の日本人なのだろう。
前回のブログにも書いたが、私のTwitterの自己紹介文には
【「花のある暮らし」は、想像以上に潤いのある日々になります。お約束します。 あ、ユーミンファンです。そして歌舞伎好きです。】
と書いてある。
そんなわけで、推し事2日目は芝居見物。
同行するのは、昨年奈留島にも行ったスタッフ。スーパー歌舞伎は観たことがあっても、本格的な歌舞伎は初めてだという。歌舞伎座も初体験。
こりゃまた気持ち悪いオタクっぷりを発揮してしまわないよう、封印せねばなるまい。
歌舞伎座のある東銀座よりもひとつ前、銀座でおりて街をブラブラ。
山野楽器を覗くと、なんとまぁユーミン万歳!がしっかり推されていた。
もうダメである。
なにせ昨日はこの実物衣装の前で自撮りまでした私。
封印されしオタクの魂、今ここに解き放つ!(厨二病)
などと、あっさり封印を解いてしまった。
……ユルい封印である。
そんな状態で歌舞伎座に到着したもんだから
「まずは地下に行くけど、木挽町広場は後でね!」
「バッグはここのコインロッカーに預けて!」
「コーヒーが飲みたい?5分で飲んで屋上庭園行くよ!」
「思い出の俳優コーナーでしんみりしなさい」
と次々指示を出し、開演前からすっかり煙たがられてしまった。
歌舞伎座万歳!
久しぶりに訪れた歌舞伎座、初春大歌舞伎の華やかな雰囲気で、祝祭感に満ち溢れている。
しかも新開場10周年になるという。もうそんなに経つのか…。
まさに「歌舞伎座万歳!」である。
祝樽は越後銘酒、八海山。
新潟といえば、来月は苗場のライブもある。
もう歌舞伎だかユーミンだかゴチャゴチャである。
ついでに言えば、ユーミンミュージアムには、中学生のユーミンがお稽古をしていた清元のお三味線も展示されていた。竿には勘所が書かれた紙が貼られており「あぁ、お稽古用のお三味線だな」とニマニマしたことも白状しておく。
歌舞伎座には独特の華やかさがある。
「芝居を観に来たんだー!」という高揚感は、どの劇場よりも格が上だと私は思う。
劇場に入れば大間には壽の凧が舞い、繭玉が一層華やかさを演出している。
鏡餅だってどぉーんと鎮座して、これぞ日本のお正月。
緞帳には富士が描かれ、椅子の張地には歌舞伎座紋の鳳凰。そして演目は曽我物で、年の初めからめでたさたっぷりである。
肝心の演目、初めての歌舞伎ならと、華やかな舞踊の【壽恵方曽我】と、コミカルな【人間万事金世中】の第2部にした。
【壽恵方曽我】は【対面】のダイジェストみたいなもんだから、とんとんと事が運んでスピーディ。初春芝居らしい華やかさもあって気分がいい。
スタッフから「これって…仇討の話ですよね?なんでそれがめでたいんですかね?」と疑問を呈された。
現代感覚からすればそうだろう。人を討つ話だから。
「無事本懐を遂げる…そこに日本人の美的感覚があるのだろうね」
と説明したが、今ひとつピンときていないようだった。
【人間万事―】は富十郎で観ていたが、彌十郎丈はくどくなく進めていた。強欲さは富十郎に軍配が上がる気もするが、奥方役の扇雀丈、娘役の虎之介丈の本物親子が輪をかけての強欲ぶりで、バランスがいい。
野田版研辰、野田版鼠小僧なども同じベクトルな役だったが、扇雀さんってこういう役がニンなんだろうか…。
こうして新年早々、推し事……もとい。芸術にどっぷりな日々を過ごし、ご機嫌さんな私は、帰路につく前に牛タンやら鮑やらと食欲大爆発で、すっかり太ってしまっている。
(何ならシウマイまで食べた)
そうでなくても年末年始の不規則な食生活だったのに、いくらなんでもこれじゃマズい。
推し活とは幸せな反面、反動も大きい。
困ったもんである。
(了)