グルメなゲレンデ

 
苗場の話、いつまで続くのだろうか。書いてる本人も分からない。

 

ゲレ食


かなり偏見があるのだが、スキー場、ゲレンデでの食事(=ゲレ食)は大して美味しくないという思い込みがあった。
どこでもあるカレー、半分伸びたような麺のラーメン、サラミが申し訳程度に乗ったピザ。
これらは全て、そういった場所でそういった食事しかしなかった、正確に言えば、そういうものしかないスキー場しか行ったことがなかったせいなのだが、初めて苗場に来た時の衝撃は凄かった。

とにかく何でもあるのだ。
和洋中のレストラン、カフェ、ピザ、寿司、串揚げ、ラーメン、さらには今はもうなくなってしまったが、かに道楽まであった。

毎年どこで何を食べようと迷うのだが、そもそもゲレンデに出ないのだから、最近はちょっと足を伸ばして、ホテルの外へ出かけることが多い。時間はたっぷりある。

 

聖地巡礼は嫌だな


この日合流する友人を越後湯沢まで迎えに行き、そのまま「PIZZERIA La locanda del pittore IWAPPARA」に向かった。
岩原スキー場の中にあるこの店は、ユーミンが毎年訪れることでも有名だ。
実を言うと、私はユーミンが訪れた所を巡る、所謂「聖地巡礼」にあまり興味がない。
友人からこの店に行くと聞かされた時、ミーハーなだけで食事をするのはちょっと嫌だなとすら思っていた。

件の気の良い友人が運転し、店に向かう車中では、この店がどれだけ美味しいかを皆が口々に力説する。
私もそのあたりが単純にできている人間なので、店に着く頃にはすっかり口の中のpHがグルメモードになっていた。

雪も少なく、道も空いていたことから、当初の予定よりもかなり早く到着した我々は、開店を待ちながらせっせと思い出づくりに励んでいた。

テーマは「昭和30年代のスキー場パンフレット」

 

こんなにも美味しい料理が!

 
開店と同時に席につき、何度も来ている友人が次々にオーダーしていく。
何が何だか分からない私は、とにかく従うまでだ。
店の奥には薪窯があり、すでに赤々と炎が揺らめいている。
窓の外はゲレンデが広がり、ローケーション、シュチュエーションは最高である。
さらに最高なのは、ほんの数日前に来店したユーミンのサインが掲げられているのだ。

なんだかんだ言っても、サインがあればやっぱり嬉しい


バカンスの醍醐味、真っ昼間のビールはこの日も健在。
雪景色を眺めながら、暖かい部屋で冷たいビールは本当に贅沢だ。
そうこうしているうちに、サラダやニョッキが運ばれてきた。

また飲んでる…

 
好き嫌いがほとんどない私だが、フレッシュトマトだけが苦手で「騙されたと思って食べてごらん」と言われて、何度騙されたことだろう。
しかしここのサラダに使われているトマトだけは違った。
トマト独特の青臭さが微塵もないのである。
昔、親戚のお婆さんが自家用に作っていた完熟のトマトだけは食べられたのだが、ここのトマトもきっとそうなのだろう。

トマトひとつで感動している私の前に、ハンバーグのようなものが運ばれてくる。上にはたっぷりのチーズがかけられており、いかにも熱々で美味しそうだ。


よく見て驚いた。とても肉厚で大きな椎茸だったのだ。
「天恵菇(てんけいこ)」という椎茸らしい。
きのこ好きな私にはたまらない一品である。
これほどまでに厚みのある椎茸だと、きっと固いに違いないと思われそうだが、これがまるで固くないのだ。
かと言ってグニュグニュとした柔らかさでもなく、程よい弾力でナイフが入る。
嫌な椎茸のえぐみが一切なく、香ばしく焦げたチーズと椎茸の香りで、思わずふふっと笑いがこみ上げてくる。
一口噛めば椎茸エキスがじゅわっと広がり、旨味が口いっぱいに広がった。

いちいち感動していたらキリがないのだが、メインのピザが運ばれてきた瞬間、言葉を失った。

ビスマルク 2,850円

 
テーブル中央に置かれた瞬間からトリュフの香りが漂う。
ピサの真ん中に落とされた卵黄はとても新鮮で、崩そうにもなかなか崩れない。
一口頬張れば、鼻に抜けるトリュフバターが顔面をだらしなくさせる。
カリッと焼かれた生地は、当然フチまで美味しく、先程の天恵菇のソースをつければまた風味が増して、いくらでも食べられる。

これほどレベルの高い料理が、この山の中にあるのだ。
旅先とか、ロケーションとか、一緒にいる友人とか、料理を美味しく感じさせる要素はいくらでもあるが、それらを差っ引いてもここの料理は素晴らしい。

結局ここでもワインを空けてしまった…

 
美味しい料理と美味しいワインですっかりご機嫌な我々は、やっぱりバカを解放させたのだった。

 
満腹満足で、この日もまた午睡。
こんなことを日常の中で毎日繰り返していたら完全に自堕落な生活だが、しつこいようだがバカンスである。

昼間のアルコールが抜ける頃、モゾモゾと起き出して今夜の本番に備え始める。
今夜はSURF & SNOW in Naeba 40th ANNIVERSARY 最終日の公演だ。
もちろん、お衣装だって替えねばならない。
いよいよ40周年記念の最終公演が始まろうとしている。