自他ともに認める劇場オタクな私。真夏の京都・南座で8月11日まで開催している「舞台体験ツアー」に参加した。

どれほどのオタクって、廻り舞台だのセリだのが大好き、何なら緞帳の上がり下がりだけでもハァハァしてしまう変態っぷり。
そんな変態な私にうってつけな舞台体験ができる催し。これは行かざるを得ない。もう何年も前から不定期に開催されているらしいが、なかなかタイミングが合わなかった。
花道から本舞台へ、廻り舞台の体験、セリの体験、搬入口を見学して、緞帳が下がり、舞台上を暗くしたまま明転させる「チョンパ」まで、きっとこの企画を考えた人は、私と同じベクトルの、まごうことなき変態だと思われる(とっても褒めてる)

舞台体験前には簡単な説明があり、一旦ロビーに出て花道へ。役者さんは奈落を通って鳥屋に入るが、駕籠とか舟とか、大きい道具が出入りする場合などはロビー扉から花道に進む。
参加者はこのルートから鳥屋に入り、本舞台に至る。

「盆」と呼ばれる廻り舞台の体験は、参加者を乗せてぐるっと一周する。
私の記憶が確かならば、歌舞伎座の廻り舞台は遊園地の遊具も手掛ける会社が製作していたはずだ。動きはメリーゴーランドみたいである。

ここは印だけで動かない
引き続きセリの体験。前後二つのセリは上下にそれぞれ動き、高所恐怖症の私にはちょっと怖い。しかし楽しいが勝ってしまう。奈落からのセリ上がりは映画「国宝」で見たそのままの眺め。
係員さんは「役者さんの気分を味わってください」と仰っていたが、私はどちらかというと紅白か年忘れにっぽんの歌のサブちゃんあたりの気分だった。風雪流れ旅。
搬入口の見学では、舞台袖の浅さに驚く。上手側のこんな狭い所に顔見世では昼夜五番ずつの道具、どうやって納めているんだ。後からちらっと見た下手袖はもっと狭い。きっと奈落に収納してるんだろうな。



緞帳が降りると、裏に大きく「火の用心」が書かれている。これはどこの劇場でも同じ。そして舞台上を真っ暗にして「チョンパ」の体験。
気分はもう藤娘である。キレイキレイなオベベ着た玉三郎である。
頭の中では
若紫に十返りの 花をあらはす松の藤浪
と長唄が流れている。
チョンパで舞台も客席も一気に照明が付くと、参加者から「おぉ」と歓声が上がるが、それすら玉三郎(=私)に対する称賛に聞こえる。ホント、おめでたい人である。
おめでたい人はそのまま
人目せき笠塗笠しゃんと 振りかたげたる一枝は
紫深き水道の水に 染めてうれしきゆかりの色の
いとしと書いて藤の花 エエ しょんがいな
と踊り出してしまい、もうどうにも止まらない。これでは玉三郎というよりリンダである。

その後もおめでたい人は見得をしたり
花道を通って戻れといわれれば、飛び六方をしたりと、やりたい放題やって満喫した。
南座の花道で飛び六方をやった華道家なんて、私くらいだろう(そもそも華道家はそんなことしない)
その昔、歌舞伎座にあったスタジオアリスでは、歌舞伎の拵えで(顔も鬘も本衣裳も)歌舞伎座ギャラリーで写真が撮れるというものがあった。
当時の価格で4万円弱。決して安くはないが、べらぼうに高いわけでもない。これ、南座でもやればいいのにと思う。
10万くらいならやりたい人は多いのではないか。いや、私ならやる。藤娘、やってやろうじゃないか。誰が喜ぶって、私しか喜ばないが。

こんなトンチキな記事をよくぞここまでお読みいただいた。深謝。
御礼にこの時の様子を動画にまとめたので、ご高覧いただければ幸いである。