私のTwitter自己紹介欄には【「花のある暮らし」は、想像以上に潤いのある日々になります。お約束します。 あ、ユーミンファンです。そして歌舞伎好きです。】と書いてある。
この段階で「本当に華道家なのか?」と疑問が浮かんでしまうが、本当のことなんだから致し方ない。
さて、その華道家。毎年のことながら年末年始はクリスマスから正月までノンストップで、いつ仕事納めをして、仕事始めをしたんだかよく分からない。
ようやく一息つけるのが5日過ぎくらい。寝不足極まる年末年始の疲れもあるし、ダラダラ過ごすのもアリだが、2023年は「芸術はじめ」として推しにどっぷり漬かる2日間を設定した。
たまたま東京での仕事が入っていたこともあり、一応は「お仕事」ということになるが、実は「推し事」が8割を占める。
この先の文章を読み返したが、結構…というか、かなりマニアックなことが書いてある。
ユーミンファンと、私の偏執的な部分をご存じの方、そして勇気のある方だけお読みいただければ幸いである。
YUMING MUSEUM
2022年12月から2023年2月まで、六本木ヒルズの東京シティビューでは、ユーミンデビュー50周年を記念して「YUMING MUSEUM」が開催されている。
直筆の楽譜や、推敲を重ねた歌詞、ステージ衣装、歴代のポスター、掲載された雑誌、セットの一部、日常使いの小物まで展示され、ファンにとっては涙なくしては見られないものばかり(ほらそこ、ドン引きしない!)
ユーミンファンの友人を伴って、会場に入った瞬間からテンション爆上りである。
中央に置かれたグランドピアノの上から歌詞の数々が降り注ぎ、それは周囲にも無数に散りばめられている。
そこから始まるユーミンの生い立ち、ディスコグラフィーなどなど、いちいち細部まで見ていくもんだから、ちっとも前に進まない。
会場内は一部を除いて写真撮影ができる。次から次へと写真を撮り続け、友人とあーでもない、こーでもないとボソボソ喋っていたら、係員の方から声を掛けられた。
「あまりにも熱心にご覧になられていたので、普段私共がご案内や解説をすることないんですが、ちょっとだけ」
と、ある部分の秘密をコッソリと教えてくださった。そんなん言われなきゃ分からんよ……な部分、ともすればスッと通り過ぎてしまうような展示の前で係員の方と盛り上がった。
様々ある展示物の中でも私が一番に楽しみにしていたのが、コンサートで着用した衣装の実物展示である。
20点ある衣装のひとつひとつに
「これは〇〇ツアーの〇曲目で〇〇と〇〇を歌って、こんな演出だった」
「この衣装は〇〇ツアーの1着目で、オープニングはスクリーンに文字がスクロールして…」
「これは〇〇のアンコールだけど、映像作品としては丸ごとカットされてる」
「この時はツアーパンフレットにも〇〇の香りが含まれてて」
などと完全な変態発言を次々繰り出し(実際にはもっと深い話をしていた)、舐めるように衣装を見ていたもんだから、周囲の方は恐れおののき、会場スタッフは警戒の眼差しを向け、同行したユーミンファンの友人ですら「キモ…」とドン引きしていた。
「推し」を語るとき、人は饒舌に、そして早口になるという。
私もきっとそうだったに違いない。
そしてその姿は、傍から見れば間違いなく不審者だったが、会場内で踊らなかっただけでも褒めてほしい。
さて、展示を見ていると、ユーミンの曲やライブが、当時の出来事や記憶とリンクしていることに気が付く。
例えば、2018年から2019年にかけて行われた【TIME MACHINE TOUR Traveling through 45years】での衣装と象。
タイムマシーンツアーの公演期間中、東京国立博物館で東寺の特別展が開催されていた。
この時、ある方からご一緒にいかが?と誘われていたが、「僕は現人神を参拝するからいい」とお断りしている。
だってほら、象に乗るユーミンのシルエットは、国宝の帝釈天騎象像そっくりではないか。
もちろん東博に誘っていただいた方からはしっかり呆れられたし、当然これっぽっちも賛同は得られなかったが。
直近に開催された【深海の街ツアー】のセットの一部も展示されている。
このセクションでも奇怪な着眼点を遺憾なく発揮していた私に、先ほどの係員の方が再度近づいてこられた。
いよいよつまみ出されるかと思ったが、何とここでも見るべきポイントをお話しいただく。
「ここ、武部聡さんのバミリがそのまま残ってるんです」
「本当ですね!「1920」で武部先生が左足で2拍目と4拍目に左足でトントンとリズムを取っていたんですよね」
「……」
心底気持ち悪い人間である。
ちゃんと自覚してるんだから赦してほしい。
他にも、本番中に美しく光っていたメーター類、あの光り方はきっとLEDに違いないと踏んでいた私は「ほぉ~ら、ここにLEDのテープライトが貼ってあるよ! YMマークも入ってる!!」と興奮し、またも係員を絶句させてしまった。
アドレナリンだかドーパミンだかがドバドバ大放出なまま、併設のカフェで提供されているスペシャルアフタヌーンティーをいただく。
私たちが席に着くと、店内のBGMがユーミンに変わった。
先ほどの係員の方といい、なんとラッキーなことだろう。
昼下がりのカフェでのんびり過ごしていると、あっという間に時は過ぎ、東京の街は黄昏てきた。
暮れかかる都会の空を
思い出はさすらってゆくの
身も心も隅々まで潤った私は、推し事からお仕事に向かった。
Ⅱへ続く